効率の良い卒業論文・修士論文研究の進め方

研究TIPS

最近、盲腸(疑惑)になりましたますけです。症状はマイルドだったので薬で治しましたが、先日高熱で倒れたばっかだったので、健康への自信がなくなりました。全然ヘルシーに生きれてないですね。歳ですかね。

今日は卒論・修論指導を毎年してて感じることや個人的に勧めてる研究の進め方について書こうと思います。6月に入り、卒論生は研究室生活に慣れ始め、修論生は就活がひと段落してこれから本気を出す時期でしょうか(まだ就活続いている人は頑張ってください!)。

卒論・修論共通して大事なこと

卒修論研究を進める上で一番は大事なことは何だと思いますか?
まだ発見されていない画期的な発明を案出することでしょうか。
まあそれはノーベル賞を取れる才能を持ち合わせている方にでも任せましょう。
突出して優秀じゃないとおそらく卒論研究の段階でものすごい結果を出すことは難しいのも現実です。卒業・修了をゴールに見据える学生さんには、「適切な研究課題」の設定に注力してもらうことをお勧めしています。
卒修論は解決する研究課題の設定さえミスらなければ大丈夫だと思います。まあこれが結構難しいのですが。。。
研究をやる以上、「まだ他の人が明らかにしてないことを明らか」にしなければなりません。これだけ聞くと大変そうに聞こえますが、少し捉え方を変えれば、他の人がやってなければ何でも良いという話です。

極端な例ですが、「美味しいあんぱんの作り方」はたくさんの人が研究してると思いますが、「あんぱんを美味しく食べるための音楽」は何か研究してる人はいないと思います(たぶん)。

そして課題を設定する際には、社会的意義があると良いです。あんぱんだと中々難しいですが(笑)
まあ例えば、日本発祥のパンの知名度は世界において認知度がそこまで高くないので、あんぱんの魅力を最大化することで日本の食文化の多様性を発信するとか、まあ大体のことは適当にこじつけられます(笑)

そして次に従来研究との差別化です。上にも書きましたが、「あんぱんの美味しい作り方は〇〇さんや〇〇さんがやってますが、あんぱんと音楽の関係性に着目した研究はありません」ということをアピールします。そしてなぜ音楽に着目したのか理由や仮説を述べます。この時、なるべく説得力のある理由や仮説を立てましょう。例えば、「〇〇さんらの研究によると、食べる料理と音楽のジャンルがマッチすると、料理がより美味しく感じられると報告されております。ただあんぱんに合う音楽は未解明となっているため、本研究において明らかにします」とかでしょうか。こうして研究課題(研究目的)が固まりました。

あとはどうやって研究を進めていくか、研究手法を考える必要がありますね。再度ですが、適切な研究課題が決まればあとはもう大丈夫です。なぜなら取り組もうとしている課題がまだ誰もやっていないので、何をやっても成果になるからです。もちろん課題が良くっても、適切な研究手法が設定できないと良い成果は出ないです。しかし極端な話、色々実験したけどよく分かりませんでしたという結論になったとしても、「AとBという条件で調べたけどうまくいかなった」という成果は、他の人にとっては重要な知見になる可能性があります。この成果のおかげで、他の人はAとBの条件を調べる必要性がなくなったので、CとDを試そうとなるからです。

あんぱんと音楽の例で言うと、「ジャズを聴きながら食べた場合とクラシックを聴きながら食べた場合で、2つの条件に有意な差はなかった。理由としてはどちらも曲に歌がついておらず、音楽のジャンルとして大きな差がないからだと考えられる。今後はポップスとクラシックなど、音楽のジャンルが大きく異なる群間比較を行う。」みたいな感じでしょうか。
それでもジャズやクラシックを聴きながらあんぱん食べた時の味の変化について言及した研究がなければ、それは唯一無二の研究となるので、結果はどうであれ、食文化の研究に貢献したことになります。繰り返しになりますが、大事なのは研究課題を正しく設定することです。

年間スケジュール

分野によって全然違うと思いますが、私が指導する学生にお勧めしている卒修論の研究スケジュールは大体以下の通りです。

4月:研究室内のキャッチアップ

とりあえず環境に慣れましょう。同期・先輩・後輩と仲良くなって、信頼関係築いてください。研究を進めていく上で周囲の人間関係はめちゃくちゃ重要です。一人で研究を1年間モチベーション保ち続けるのは結構厳しいかと思います。
卒論生の場合、まず何したらいいかわからないと思いますので、過去の先輩達の卒修論を読み漁ったり、発表資料を見比べて、何となく一年後のゴールを想像することをお勧めします。そして何が研究課題として残されているのかを整理しましょう。修論生は、卒論と修論は何が違うのか確認しましょう。これは大学や研究室によって文化が違うと思いますが、自分は修論生に対しては、研究室内での既存研究の延長ではなく、新たな研究テーマを探してもらってます。

5月:暫定的な研究課題決め

5月中に一度、研究課題を決めてもらってます。自分は学生さんが主体的に決めたテーマに関して、最初から否定することはしないようにしてますが、ただどうしてそのテーマにしたのか、納得できる理由をひたすら聞くようにしてます。論理的な整合性がないようであれば、もう一度考えてもらって、再び説明しにきてもらうことを繰り返してもらいます。学生さんにとっては早く手頃なテーマを教えてくれと思うかもですが、この訓練をやっておくと、相手を説得するためには根拠が必要であることを体感でき、後々のゼミ発表や論文執筆の時に役に立つのでお勧めです。

6-7月:設定課題の検証

6月は暫定的に決めてもらったテーマに関して、本当にいけそうかどうかを色々予備実験などをしてもらい検証してもらいます。セットアップや実験条件は適当で良いです。ものつくる系の研究であれば3Dプリンターとかで試作してもらってます。とりあえず手を動かしてもらい、自分の設定したテーマが妥当だと思ってもらえる結果を出してもらいます。なるべくこの段階でPDCAサイクルを一周してもらい、研究の感覚を掴んでもらうことを目的としてます。予備実験の段階で、良い結果が出ればこの先安心ですし、仮に上手くいかなくても傷はまだ浅く、一度PDCAサイクルを回しているので次に考える研究課題はより洗練されます。7月あたり概ね研究課題が決まってると安心です。迷走している学生さんにはこの辺りから少し介入します。

8月:中間発表+夏休み

だいたいこのあたりで中間発表があるかと思います。この段階で研究課題の妥当性が予備調査結果と共に示せると大体の指導教員は文句言わないんじゃないでしょうか。夏休みの過ごし方は人それぞれですが、大体2-3週間くらいは休みにします。進捗遅れてて来たい人は自由にどうぞって感じですが、しっかり休むことも後半戦耐え抜くためにはとても大事です。

9-11月:研究手法検討

夏休みが終わったら、研究手法の構築に本腰入れてもらいます。ただ課題設定がしっかりできていると研究手法は自ずとやることが決まっていることが多いです。ここからはいかに時間かけたかでクオリティは大きく変わってくると思います。ひたすら手法考案と実験を繰り返して下さい。そして11月くらいに入ったらどういうデータが揃えば論文がまとまりそうか、指導教員や先輩と相談しつつ線引きができると良いかもしれません。残された時間が少なくなってくると気持ちが不安定になってくるかもしれませんが、どこまでやったら卒業できそうか知っておくと少しは心が穏やかになると思います。

12月:本実験

12月に入るといよいよ卒修論も佳境ですね。クリスマス〜年末年始が最後の調整期間ですが、なるべく計画的に研究してちゃんと休めることを願っています(とは言いつつも実際はなかなか難しいですが笑)
12月は卒修論発表に載せるための「綺麗な実験結果」を出してもらいます。11月まではひたすらスクラップ&ビルドを繰り返してもらいましたので、とっ散らかったデータが多いです。サンプル数が統一されていない、実験条件に偏りがある、実験装置の構成が微妙に変わっている等。
なので、一旦卒修論を起承転結を整理し、話を完結させるために必要な結果は何なのか精査してもらいます。必要な実験データが取り終わったら冬休みに入ってもらいます(笑)

1月:論文執筆

1月は可能な限り論文執筆と発表資料作成に当ててもらうようにしてます。ギリギリまで実験しなきゃという気持ちもわかりますが、発表資料や卒修論本文の内容が中途半端になる方が審査に落ちる可能性が高いです。今手元にあるデータで最大限のクオリティの発表資料を作ることをお勧めします。内容が微妙でもプレゼンの出来が良いとなぜか良い研究だという評価を受けることがよくあります(本当は良くないのですが笑)逆にどんなに良い成果が出ててもプレゼンが酷いと、「色々頑張ってたんだと思うけど、何をやってたのかよく分からなかった」という悲しい評価が下されることになります。
それくらいプレゼンの占めるウェイトは大きいです。

2月:審査

最後は気合いで乗り切ってください。高々10分ちょい教授たちの前で立っていれば卒業できるのです。滝行だと思って耐えてください。

大事なのは「発表の場にちゃんと行く」ことです。残念ながら過去に見てきた学生さんの中に、途中で精神的に病んでしまいなかなか思うような研究成果が出ず、発表当日にバックれてしまい、そのまま退学してしまうというケースがありました。卒修論の場合、発表の場に行ってちゃんと発表して質疑応答を耐えさえすれば、結果がどんなにボロボロでも大体は卒業させてもらえるはずです。

精神的に病まないことがとても重要です。たかだか研究です。自分の身体を第一に!

最後に、炎上しないプレゼン資料を作るために参考にしてるお勧めの書籍を紹介しますね。わかりやすい資料を作るのであればこれ1冊読んでおけば大丈夫だと思います。

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研究発表に特化したスライド作成のテクニックはこちらも参考になると思います。

わかりやすい研究発表をするための3つの手順【スライド・話し方】
わかりやすい研究発表をするための3つの手順【スライド・話し方】を紹介します。研究発表の方法がわからず困っている学部性の方向けです。

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ヘルシーな研究生活を!Good Luck!

コメント

  1. […] 学部生・修士生の指導にお悩みの博士学生はこちらの記事もよかったら参考にしてください。 […]

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