博士論文審査に進むためにはジャーナル論文を何本か採択されていなければいけないと思います。
私の場合3本が要件だったのですが、修士〜博士1年の間は泣かず飛ばずで全然通らずにヤキモキしてました。
自分には論文の書き方を指導してくれる人が近くにおらず、どうしたら論文が通るようになるのか試行錯誤を重ねておりましたが、結果的に博士2年から3年の間にファーストで6本立て続けに採択されるようになりました。
この記事では工学系論文を対象に自分が実践したすぐに使える論文の書き方TIPSを紹介したいと思います。
とにかく上手い人の書き方を真似る
まずはこれに尽きると思います。
質の良いジャーナルに掲載されているかつ自分の研究の競合になる論文を選んで、分析してください。
自分の場合はロボットが専門なのでIEEE Transactions系の論文(IF: 4前後)から選んでおりました。
真似るポイントとしては以下の3点です。
- 文章構成
- 専門用語・表現方法
- 図の作り方
文章構成に関しては、例えばIntroductionの場合、どの程度の分量研究背景に割いて、どのくらい従来研究を引用し、どのようにオリジナリティを主張すれば良いのか、Methodの場合にはどの程度詳細に実験条件を説明すれば良いのか、どのような順序で作ったシステム・手法を説明すれば伝わりやすいのかを意識して分析してました。
専門用語は分野ごとに大体共通して決まっているので、DeepLやGoogle翻訳で出てきた英単語を馬鹿正直に使わないでください。
表現方法に関しては、初めて書く人ほど実際に使われているものを真似てください(剽窃に引っかからない程度に)
おすすめは、真似たいセンテンスをDeepLで英語→日本語にして、その日本語をまたDeepLに入れて日本語→英語にすると微妙に表現方法が変わるので剽窃に引っ掛からなくなります。
お金がある人はエナゴやエディテージなどの英文校正サービスを使ってください(笑)
図のクオリティは非常に重要です。
結果の棒グラフ、エクセルのデフォルトの設定を使ってたりしませんか?
コンセプトを伝えるイラスト図、パワポで単純な四角と丸を組み合わせたものをイラストに使ってませんか?
トップジャーナルほどダサい図は使われてません。
本当に革新的な研究成果を出した場合には図のクオリティは関係ないかもしれませんが、査読がなかなか通らずに困っているレベルなのであれば、少しでも採択率を上げるために図のクオリティ向上を意識してください。
また、上手い人の論文をたくさん読むのと並行して、論文の書き方の基本も改めて確認してみてください。
ちゃんと良い論文の書き方の基本が抑えられているのが分かるかと思います。
論文の書き方の基本を学ぶ上で参考にした書籍をいくつか紹介しますので、よかったら参考にしてみてください。
イントロに命をかける
査読者も大変忙しいです。
読みづらい文章は反感を買ってしまい、例え良い結果を出していたとしても落とされてしまう可能性があります。
特にイントロは査読者が一番元気な状態で読むので、ここでこの論文は何がしたいのか上手く伝えられないと致命的です。
落ち続けていた時の査読指摘事項No.1は「この論文のNovelty/Contributionが不明瞭だ」でした。
自分の中では書いているつもりでしたが、案外伝わっておりません。そして伝わっていないと致命傷な内容です(笑)
良い論文は大体イントロの章の中にNoveltyやContributionの説明のために節を設けております。
そこの節さえ読めばこの論文が何をしたいのか、何が新しいのか端的に分かるのは査読者にとっては大変ありがたいですので、ぜひ意識してもらえればと思います。
とにかく謙虚になる
最初はついつい良い結果ばかりを主張する文章を書いてしまいがちです。
「こんだけ良い結果を出した俺すごいっしょ!この研究は完璧で一部の隙もない!」という書き方をされると、査読者は「本当にそうなのか?」という斜に構えて粗探しをするように読むようになる可能性があります。
私が学生に論文指導する際には必ず「Limitation」という節を作るよう勧めております。
この論文で足りないところは何なのかということを明示的にすることで、「私はしっかりと至らない点も把握してます」アピールをします。
基本的に査読は引き算で評価しますので、先に論文の弱点を自分で曝け出し、査読者に指摘させないことは非常に効果的だと思います。
ただ何でもかんでもLimitationとしてあげてしまうと論文の完成度としてどうなのかという視点で見られてしまうので、良い塩梅を探ることが重要になります。
自分の場合は、誰が読んでも思いつくような顕著なLimitationをとりあえず列挙しつつ若干の指摘の余地を残した状態で一旦提出し、レビューの中で指摘された事項を追加で入れていくことで査読者への敬意を汲んでいくスタイルで臨んでいます。
査読者のコメントは可能な限り従う
1回目の査読結果でMajor Revisionになったら、70%くらいの確率でこちらの勝ちです。
あとは査読者のコメントに丁寧に対応します。
いかに納得のいかない指摘事項があっても決してあからさまな反論をすることはお勧めしません。どんな形でも良いので本文に反映させた方がいいと思います。
逆にどんな形であれ反映さえすれば査読者は嫌な気持ちにはなりません。
対応が難しい指摘事項に関しては、指摘事項をそのままLimitationに突っ込んでます。
例えば、「追加実験としてAとBとCの条件をやってください」というコメントをもらった際にCの条件をやるのが厳しい場合は、AとBは追加実験の結果を反映し、Cの条件に関しては「〇〇の理由で実施できなかったため、Limitationに加えました」と書けば認めてもらえることがあります。
この辺は査読者のあたりハズレもあるのであくまで参考程度に考えてもらえればと思います。
その他、基本的なリジェクト理由
内容がジャーナルの対象領域・レベルに合致していない
→自分の原稿に合ったジャーナルを見つけましょう。必ずしもインパクトファクターの高いところばかり狙う必要はありません。まずは通すことを考え、インパクトファクターは低めなところで1本抑えておくことは精神的にも楽になるはずです。
言葉とスペリングに関する問題
→回りくどい表現を避けて簡潔明確に書き、Grammaryなどのスペルチェック機能を使いましょう
意図しなかった倫理的問題(例:剽窃)
→特に自己剽窃に気をつけてください。同じトピックでいくつか論文を書いていると背景が似たり寄ったりになるので意図せず同じ文章を書いてしまう場合があります。
ジャーナルの投稿規定を遵守していない
→投稿規定をよく読み、理解し、すべての規定に従いましょう。特に文章のフォーマットはジャーナルによって違うので。
まとめ
- 上手い人の書き方を真似る
- Introductionの中にContributionの節を設ける
- Result/Discussionの中にLimitationの節を設ける
- 査読者の指摘には全面的に従う
これらを実践するだけでもだいぶ採択率が上がるはずです。あとはやはり量をこなす中で自分の中で書き方が確立していく必要があります。
そしてお勧めは常に1本はUnder review状態にしておくことです。仮に1本リジェクトになったとしてもUnder reviewの状態のものがあると希望が持てます。そしてリジェクトされたものはすぐに修正して別のジャーナルに出しましょう。
博士課程3年は意外と短いので、論文投稿は戦略的に行うことをお勧めします。
学部生・修士生の指導にお悩みの博士学生はこちらの記事もよかったら参考にしてください。
コメント
[…] また論文の通し方に関しては以前記事にしておりますので、よかったらご覧ください。 […]
[…] こちらの記事にも書き方TIPSを書いているのでよかったら読んで下さい。 […]